「やっぱりな、オレとトクちゃんは、運命の赤い糸で結ばれとるんやって、昨日よう思うたわあ」
また、トク子と何かいいことがあったらしい。でも、つい昨日ケンカして別れる別れないのと大もめしていたばかりだろう、と一作はあきれる。それに、
「何言ってんだよ、さっきアケミちゃんに、今度デートしようって誘ってたの、ちゃんと見てたんだぞ」
また喫茶店のアケミに声をかけていたのを、しっかり見ていたのだから。
「昨日、別れるって言ってた話はどうなったんだよ」
清太郎は一笑に付した。そんなこと忘れてしまっと言わんばかり、気にも留めていないようだ。
「冗談やがなー。それより、どうなんだよ。お前は」
「オレか…。どうなのかな」
運命の赤い糸…。そういえば今まで信じたことがなかった。
自信がなさそうに、一作は自分の小指を見る。
この小指は、誰と繋がっているのかな。運命の人と結ばれているという、赤い糸が…。
たったひとりだけの、運命の人。きっとどこかにいるという、運命の人…。
その人は、きっと、きっと…。あの、さくらさんであるのなら…。
いや…。そこまで考えて、一作は首を横に振った。
「一作ちゃん、あの人のこと考えてたやろ?」
「え、っ…」
「その顔は図星やな。照れるな照れるなって」
一体、何を考えてたのかな…。と思うと、少し恥ずかしくなった。
「そうだよなあ…」
何考えてるんだよ、と否定してみても、ふと先ほどのさくらのことを想う。
こんなことをさくらさんに話したら、どんな顔をするかなあ。
「笑うに決まってるよなあ…」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、ひとり言だよ」
2013/09/22