お待ちどう様でした、と玲子の前に運ばれて来たのは、真っ白なクリームと赤いイチゴのグラデーションが鮮やかなパフェ。
「わぁ…」
まるで、宝石を眺めているかのように瞳を輝かせる玲子を、向かいで地味にコーヒーを頼んでいた隆正は、微笑ましく見守っていた。
「パフェにそんなに喜んでるあたり、玲子もまだ子供だね」
「ひどーい。村越さん」
隆正にからかわれて膨れっ面になる。でもすぐ、ころっと機嫌を直して「いただきまーす!」と柄の長いスプーンを手に取った。
まずはクリームをひと口。口の中いっぱいに甘さが広がっていく。
「おいしい…」
まだまだ子供だな、と玲子をからかいながらも、そのあどけなさもたまらなく愛おしく感じる。連れて来て良かった、と心から思えるほどだった。
しかしそんな玲子の姿を見ていると、重なり合うようにまた異なる面影がふと、浮かび上がる。
「わーい! パフェだぁ!」
「おいしいかー?」
「うん! パパもたべるぅ?」
「じゃあ、パパももらっちゃおうかな」
「はい! あーんして…」
「村越さん! 村越さんってば!」
玲子の声で、隆正ははたと我に返った。あまりにも鮮明に映し出されたその面影に、思わず見入っていたのだった。
「悪い悪い、玲子のこと見てたら、ちょっと…な」
「ヘンな村越さん。そうだ。ねえこのイチゴ、良かったら食べて。今日おごってくれるお礼!」
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えるかな」
そうは言いながらもやや人目がはばかられ、苦笑いした。
「はい村越さん! あーんして…」
「あーん…」
スプーンの上に乗せられたイチゴを、身を乗り出してぱくっ、と口で受け止めた。クリームの甘さとイチゴの酸っぱさが心地良く絡み合う。
「おいしい?」
「うん、とってもおいしいよ」
心なしか目の前の玲子は、あの面影よりもずっと愛らしく映っていた。彼女と同じように頬を緩ませる。
でも美奈子には悪いな、と内心思ってもいたのだった。
2012/07/15