今日は日曜日。珍しく、今日は休み。外はとてもいい天気で、久しぶりにゆっくりとした日曜日を過ごせる…はずだったのに…。

「ねえ、いつまでそこにいる気なの?」
 ため息をついて、洋子はベッドの上で寝そべっている闖入者に振り返った。

 その闖入者…、浩介は聞いているのかいないのか、まったくのん気そうにくつろいでいる。

「だってさー、こんないい天気なのに草むしりとドブ掃除だぜ? 冗談じゃないよまったく。たまの日曜くらい休ませてくれたっていいじゃないか。なあ?」
「何言ってるのよ。それなら、いい天気で良かったんじゃないの」

 家族がそれぞれ用事で出かけたあと、駆け込んでくるように家に来たのは浩介だった。なんとかする会社の仕事を放り出して来たので、かくまってくれと言う。

「だけどさあ、家族揃って遊園地に出かけてる間に、オレたちが草むしりなんて不公平だよ」
「しょうがないじゃない。それが仕事というものなのよ」
 洋子も、浩介の言いたいことだってわからなくはない。しかし、こうして浩介がだらだらしている間に、他の三人はちゃんと働いているのだ。それだって、十分不公平というものだろう。

 だから、家族も誰もおらず部屋で二人きり、浩介と過ごしていることは嬉しいことであるけれど…、素直には喜べるはずもない。

「だいたいさあ、日曜日ってなんのためにあるんだよ」
「どういうこと?」
 いきなり何を言い出すのかと、洋子は浩介へ身体を向けた。
「安息日ってたってさ、この現代社会において、みんながみんな休みじゃないじゃないか」
「当たり前でしょ? みんなが一緒に休みを取ったりしたら、困る人がどこかで出てくるんだから」

「そう言う洋子だって、日曜日くらい休みたいだろ?」
「それは、そうだけどね」
 洋子はそこで言葉を切り、浩介の隣に腰を下ろした。

「みんながやりたくないときに頑張る人には、それだけの報いがあるものなのよ」
 浩介は、泳いでいた視線を向ける。初めて、洋子と目が合った。
「洋子…」
「終わったらまたいらっしゃい。ごちそうしてあげるわ」
 優しく微笑んでいる洋子に、浩介は目の色を変えて、覚悟を決めたようにベッドから身体を起こした。
「ようし、約束だぞ」
「でも、中谷くんたちも連れてくるのよ」
「チェッ、しょうがないなあ」

 このあと、洋子のひと言が効いた浩介たちは仕事を手際よくこなし、賑やかな食事を楽しんだのだった。




2013/10/20






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