初春の柔らかい陽射しと、甘いふんわりした心地いい香りが漂って、とても気持ちがいい。その朝、あたしは、目覚まし時計よりも先に目が覚めた。

 とっても嬉しくって、早く理介さんに知らせてあげたいと思って、首を動かして隣を見てみると、まだ理介さんはぐっすり眠っている。こんなに素敵な朝なのに、眠っていたらもったいないよ?

 あたしは起き上がって、理介さんに覆いかぶさるようにして顔を覗き込んだ。

「理介さん、起きて…」

 そう囁いて、あたしはチュッ、と軽く音を立てて理介さんに口づけた。

「ううん…」

 すると理介さんは、気がついたように声を上げて眉間を動かしたけど、まだ寝起きという感じでもないみたい。

「ねぇ起きて、理介さん。とっても…」

 理介さんの身体を軽く揺すって呼びかけると、素早く理介さんに抱きしめられて、驚いて声を上げている間にあたしは理介さんの下になった。

「起きてるよ。小浪」

 理介さんも、とっても嬉しそうな顔をしていた。でも、あたしとは理由が違うんだけどね…。

 微笑み返すと、理介さんは、さっきよりも強く音を立てて、あたしに口づけた。

「やだ、もう…」

 ちょっと恥ずかしくて、あたしは理介さんの身体を手のひらで軽く押すと、理介さんは面白がるように、頬や首すじに何度も口づけを落とす。もう恥ずかしさも忘れて、くすぐったくてあたしは笑った。

「やめて、…あっ、もう。くすぐったいってば…」

 理介さんは口づけをやめると、あたしと額をぴったりとくっつけた。ニコニコ笑いながらあたしたちは見つめ合う。

「で、さっき何を言いかけたんだ?」

「『とっても気持ちがいい朝だよ』って言うとこだったのよ?」

「そうか。じゃあ、もっと気持ちがいいことでも、しようか?」

 いつもなら、こんなときに何考えてるのよ…。とあきれるところだけど、こんなに素敵な朝なんだし、今日は許しちゃおうかな…と、ちょっといけない気分になっちゃう。ああ…こんなこと、理介さんに伝わってませんように!

「下に聞こえちゃうよ?」

「それは、小浪次第だろ?」

 そう囁いて、またあたしに口づける。今度のキスは、さっきまでの中で一番、優しかった。理介さんはなかなか唇を離そうとしない。あたしは思わず目を閉じて、理介さんの頬にそっと触れた。


 そのまま、理介さんにゆったりと身体を任せるあたし。春の陽射しの誘惑に負けて……なんて、とてもじゃないけど言えないよ…。




2011/11/12






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