「理介さん、お仕事お疲れ様」

 原稿を書き終えた理介さんを労ってあげようと、あたしは理介さんの肩をぽんぽん…と叩き始めた。

「サンキュー、気持ちいいよ」

 理介さんは、本当に気持ちよさそうに身体を緩めている。あたしもやりがいがあるというものだわ。

「小浪…、次はもっとこう、押してくれないか?」

「こう?」

 肩をぐっと指で押すように、指を動かして理介さんはあたしに指示をした。理介さんに言われた通り、あたしは指を立てるようにして、ほぐすように理介さんの肩に力を入れた。

「そうそう。あー、気持ちいい」

「そう言ってもらえると嬉しい」

 顔をのぞき合って微笑むあたしたち。それを、見るからに羨ましそうな顔をして一久さんは見ていた。

「見せつけちゃってぇ。憎いよこの」

「あら。じゃあ、一久さんにはあたしが肩を叩いてあげましょうか?」

 あたしたちに毒づく一久さんに、すかさず愛の手を差し伸べたのはアケミちゃん。でも一久さんは、せっかくの好意なのに見向きもしない。

「悪いけど、遠慮しとくよ」

「ひどーい。一久さんってそんな冷たい人だったんだ」

 アケミちゃんの言葉を冷たくあしらう一久さん、本当につれないなぁ。ちょっと、アケミちゃんに同情してしまいそうになった。

「ほら、手が止まってるぞ」

「あっ、ごめんなさい」

 いけない、つい手が止まってた。あたしは再び、想いを込めて理介さんの肩を指で強く押した。




2012/04/30






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