出版社の帰り道のこと。ショッピング街で若い女の子たちが何やら集まっているのを見て、理介は足を止めた。
最近出来た、女の子向けのファンシーショップだった。ステーショナリーや、バッグといったかわいらしい雑貨類が並んでおり、店内もパステルカラーに装飾されていて女の子が好きそうな雰囲気といった感じである。
場違いかな、と少々気後れしながらも店内に足を踏み入れた理介はふと、ヘアアクセサリーの棚に目を止めた。
かわいらしい花の飾りがついたピンク色の髪留めや、鮮やかな模様が施されたシュシュ、カチューシャなど、多種多様な品揃え。
小浪がこれを付けてみたらかわいいだろうな…と想像をしながら、理介は頬を緩める。
そんな様子をじっと見つめていた女の子と目が合い、いたたまれなくなった理介はあたふたしながら店を後にした。
店を出てしばらく歩くと、少し離れたところにあるショーウィンドウにまばらに人だかりが出来ているのが見えた。
近寄ってみると、そこはペットショップ。そこには女性連れからカップルまで色々な人達に囲まれ、ガラス越しにおもちゃで遊んでいる子猫の姿があった。
子猫の小さな動きに、かわいい、かわいいと声を漏らす人々。理介もそんな中に紛れて、かわいいなと微笑ましく思っていた。
動物が好きな小浪もこれを見たら、目の前にいる人達のようにかわいい、と目をきらきらさせるだろうなあ。理介はそんな光景をふと思い浮かべ、笑みをこぼしていた。
「ただいまー」
「おかえり。ご飯できてるよ」
理介が部屋に帰ってくると、待っていてくれたらしい小浪が笑顔で出迎えてくれた。
そんな小浪の嬉しそうな顔を見て、理介は先ほどまでに街で見てきた色々な光景を頭の中で重ね合わせる。
「どうしたの?」
うっかり意識が飛んでしまっていた理介は、きょとんとしていた小浪のひと言で我に返った。
「いや、何でもないよ。それより小浪、今度一緒に街に出かけてみないか?」
「いいけど…」
いきなり何を言い出すのかといった顔で、小浪はなおも不思議そうに理介の顔を見ていた。
「変な理介さん」
何と言われようといい、ささいなことでも二人で共有したい、一緒に笑い合いたいと思えることが幸せなことなんだなあ…。
理介は、そんなことを考えながら一人でほくそ笑んでいた。
2024/12/3