夕食の準備をしているあたしのところに、何かを言いたげにテル坊が寄ってきた。片手に雑誌を持っている。
「ねえ小浪、これ見た?」
「何のこと?」
「これ。動物占いだって!」
「動物占い?」
聞いたことがない。あたしは首を傾げた。
「誕生日とかから、その人を動物に当てはめるんだよ」
「ふうん。面白そうじゃない。テル坊は何の動物なの?」
「何かわかる?」
「うーん……」
「わからない?」
あたしが腕を組んで考えている隙を狙って、テル坊が出来たばかりのおかずのほうへ手を伸ばしている。もちろん、見逃すわけがない。
「こら!」
お手付き。チェッ、とテル坊は少し悔しそうな顔をしていた。
「まったく、油断も隙もあったもんじゃないんだから…」
そこでひらめいたあたしは、「わかった!」と手をぱん、と叩いた。
「そんなコソドロみたいなことして…。そういうの『頭の黒いネズミ』っていうだろう?」
「バレちゃったか…」
「ぴったりだよ」
「小浪だってピッタリだよ」
悔し紛れにテル坊は反撃するように言う。ちょっと嫌な予感…。
「何で?」
「小浪はネコだもん」
「あんたにしてはいいこと言うじゃないのぉ。どうよ。ぴったりでしょー?」
そう言って目をぱっちりとしぱたかせると、テル坊はプッと吹き出した。あたしは口をへの字に曲げる。まったく失礼しちゃうよ。
「何だい。わからない子だよ」
「じゃあ、理介さんは何だと思う?」
「そうだねえ…。やっぱりあれしかないよ。サル山の親分! うん、ぴったり!」
「ヘヘッ、じゃあ理介さんにそう言ってこよーっと!」
「あっ! 待てテル坊!」
「ほら、すぐそうやってカッとするとこがぴったりだよ!」
工房のほうへ逃げると見せかけて、「もーらい!」とおかずをつまんで、あたしはテル坊にまんまとかわされてしまった。占いの結果は散々だし、もう…。
だけど、あとで理介さんの占い結果を見てみたら、本当にサルだったの。占いって、結構あなどれないね?
2013/04/03