「うぅ…」

 あたしが台所でかぼちゃと格闘していると、ただいまーとドアが開き、理介さんたちが帰ってきた。
 理介さんと一久さんは、両手にビニール袋を下げている。今日は冬至なので、その買い出しの帰りなんだ。
「ほら、柚子とかレンコンとか買ってきたぞ。…ってまだかぼちゃ切れてないのか…」
「だって固いんだもん…」
「しょうがないよ。かぼちゃは固いんだから。小浪ちゃん、俺が代わりに切ろうか?」
「うん、お願い」
 あたしに代わり、一久さんがかぼちゃに浅く刺さっている包丁を握った。でも、一久さんの腕力でも、なかなかかぼちゃに食い込んだ包丁は縦に動かない。

「ううう…これは手ごわいな…」
「何やってんだ一久、ちょっと俺に貸してみろ」
 今度は見かねた理介さんが一久さんと替わって包丁を握る。理介さんは両手で力任せのように包丁を下ろそうとするけど、それでもかぼちゃはびくともしない。
「ふんっ…確かにこれは固いな…でもこうすれば…」
 理介さんは、かぼちゃに刺さった包丁を両手で押さえつけるようにして力を込めた。あたしと一久さんは、その様子を心配な顔で見ていたら、その次の瞬間…。
「うわぁっ!」
「り、理介さん大丈夫!?」
「兄貴…」
 嫌な音を立てて、包丁は欠けてしまった。理介さんは手を怪我しちゃうし、もうお手上げ…とみんな落ち込んでしまったんだけど、その後お母ちゃんがやって来てくれたおかげで、なんとか冬至の食事は無事に完成したんだ。


「いただきまーす!」
 今日の食卓に並んだのは、小豆のおかゆ、かぼちゃの煮物、レンコンとこんにゃくの炒め物。そして銀杏の炊き込みご飯と豚汁。
 お母ちゃんにいろいろアドバイスをもらってみんなで作ったから、おいしさもひとしおだね。

「ねえ小浪、なんで冬至にかぼちゃを食べるの?」
「昔は今みたいに食べ物の保存がきかなかったから、保存性の高いかぼちゃは貴重な栄養源だったの。かぼちゃを食べて栄養をつけて、風邪をひかないようにしようって考えから来てるんだよ」
「ふーん」
 テル坊が突然そんな質問をしたので、あたしは意気揚々と答えてあげた。…お母ちゃんの受け売りだってことは内緒だよ?


 その日の夜。あたしは柚子を浮かべた湯舟の中で、体操座りをしてじっと待っていた。
「お待たせ。ごめんな、遅くなって」
 しばらくして、浴室へ入ってきた理介さん。一緒にお風呂へ行こうとしたら出版社の人から電話がかかってきたので、しばらくあたしは待ちぼうけをしていたの。
「もう、湯冷めして風邪ひいちゃうよ…」
「悪い悪い。ごめんな小浪」
 そう言って理介さんはあたしのいる反対側に湯船に足を入れた。二人も入ると窮屈なのか、お湯がザバァ…と溢れ出る。
「今年もあとわずかだけど、元気で暮らそうな」
「うん」
 そしてあたしは、身体を反転させて理介さんに背を預ける体勢を取った。これなら、温かいから湯冷め知らずだよね。




2024/12/21






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