「もう、理介さんったら…」
買い物の帰り道。歩きながら理介さんと談笑していたあたしは、ふと道端で世間話を楽しんでいたらしいおばさんの笑い声に耳がとまった。
気になってそちらを見てみると、二人いるおばさんがあたしたちのほうを見ていた。他の人を見ているのではないかな、と思って周りを見回してみたけど、おばさんたち以外にはあたしたちしかいない。
「仲が良さそうね、兄妹かしら…」
「いいわねぇ。いくつになっても仲睦まじい兄妹で」
話しながら、おばさんたちは笑っていた。その会話は、あたしたちに直接向けられたものではないけれど、なぜだかあたしには、その二人の会話が腹立たしく感じられた。
「ん? どうしたんだ、小浪」
歩きながらあたしの顔を覗き込んだ理介さんは、ムッと顔をしかめていたあたしに戸惑っているようだった。
「なっ、何だよ…。オレが何かまずいことでも言ったか?」
「違うわよ。何よ、あの二人。あたしたちが兄妹ですって。失礼しちゃわない?」
「まぁ、見ようによっちゃあ…」
すでに通り過ぎていたおばさん二人を一瞥して、理介さんは言った。だけど、その言い方が気に入らない。
「ひどい。それじゃあたしと兄妹と思われてもいいみたいじゃない」
「そんなこと言ってないだろう」
「そう言ってるのと同じよ」
「…じゃあ…、どうして欲しいんだよ…」
困ったように、理介さんは少し口ごもりながら言った。
本当に鈍いんだから…。上目遣いをして、あたしは理介さんと腕を絡ませて寄り添った。
「こう、して!」
「これなら、夫婦に見えるってか?」
「うん!」
腕を組んで再び歩き出したあたしたちは、さっきよりもずっと、ずっと、距離が近くなったような気がする。
理介さんもきっと、そう思ってるはず、だよね?
2012/06/27