残暑も終わって、冷たい風が吹き始めている10月。

 学校では、季節の変わり目に風邪をひいて学校を休む生徒が増えていた。

「みんな静かに。今朝電話があったが、藤野は風邪で欠席だそうだ。みんなも、体調管理には気をつけて、うがい手洗いは忘れずにすること」
 前日、ほたるは体調を崩して学校を早退している。心配したエリとさやかは、その日にほたるに電話をかけたが、その時はまだ元気そうに振る舞っていた。
 ほたるが風邪で欠席したことにより、これでクラス内の風邪での欠席者は5人になった。

 休み時間、エリとほたるのことで話をしているさやか。
「ねえエリ、明日の午後にほたるのお見舞いに行ってあげない?」
「そうね!ほたる、きっと喜ぶわ」
「じゃあ、授業が終わったらエリの家に行くから、待っててね」
「うん!わかったわ」

 放課後、内木と家路についているエリ。内木との話題はやはり、ほたるのことであった。
 内木も、学校を休んだほたるのことを心配しているようである。
「ねえエリちゃん、明日授業が終わってからほたるちゃんのお見舞いに行くんでしょ?」
「そうなの!何を持って行ってあげようか、今から考えてるのよ〜」
 うきうきした様子で答えるエリ。エリの喜ぶ顔を見て、内木も笑顔を浮かべる。
「そうだね。ねえ、僕も一緒に行っていいかな?」
「本当!?みんなで行けば、ほたる、もっと喜んでくれると思うわ!」
 内木も来てくれるとあって、ますますうきうきした様子になるエリ。

 楽しそうに話をしていると、とうとう別れ道に来てしまった。
「じゃあ、明日授業が終わったら、エリちゃんの家に行けばいいんだね?」
「うん!待ってるわ」
 内木は「じゃあね」と手を振って別れ、エリは「さようなら!」と笑顔で手を振った。

 次の日の放課後、先にエリの家にやって来たのは内木だった。

 エリは、内木を笑顔で出迎えた。
「いらっしゃい!さやか、まだ来てないのよ」
「そうなんだ。おじゃまします」

 内木をリビングに招き入れ、エリは早速気になる質問をする。
「ねえねえ!内木さんは何を持ってきたの?」
「それは、ほたるちゃんの家に行ってからのお楽しみだよ」
 落ち着いた口調で答える内木に、エリは当然面白くない。
「えーっ!内木さんのケチー!」
 エリがむくれていると、さやかがやって来た。

 内木をリビングに待たせ、エリは玄関へ向かった。
「いらっしゃい。内木さん、もう来てるわよ」




2009/11/03






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