夏休みも3週目に入った月曜日。さわやかな青空の広がるいい天気。セミの声があちらこちらから聞こえ、夏らしさを十分に演出している。

 この日、エリは内木の家で一緒に夏休みの宿題をしようという約束を交わしていた。


「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。車には気をつけるのよ」
「はーい!」


 エリは元気よく家を飛び出し、内木の家に向かっていた。
 するとエリの前方で、さやかとほたるが歩いている。


「あっ、さやかー!、ほたるー!」
 さやかとほたるを見かけたエリは、早速声をかけた。


「あら、エリじゃない!」
 さやかはエリの声に最初に気づき、声をかけた。

「これから内木くんの家に行くの?」
「そう!夏休みの宿題教えてもらおうと思って」


 内木の家へ行くとなって、大はりきりのエリ。そんなエリに、ほたるがふと口を開く。


「ねえ知ってる?エリちゃん」
「どうしたの?」
「今度の土曜日にね、神社で夏祭りがあるのよ」
「本当?」
 ほたるの話を聞いて、エリは急にテンションが上がった。
「ええ。さっき、あそこの掲示板に書いてあったわ」
「あたしとほたるは2人で行こうって約束したんだけど、エリは内木くんと行くんでしょ?」
「そうね…。そうしようかしら。ありがとう!さやか!ほたる!」

 エリは、さやかとほたるに手を振りながら、内木の家へ走って行った。


 それから間もなく、内木の家に到着したエリ。夏祭りのことを早く知らせたいエリは、とても弾んでいた。


「内木さーん!」
 エリは勢いで、ドアを開けて内木の家へ入った。


「どうしたの?エリちゃん」
 エリが入ってきて間もなく、内木は現れた。


「ねえねえ!今度の土曜日に神社で夏祭りがあるでしょ?一緒に行きましょうよ!」


 内木は少し考えたが、すぐに気乗りした様子だった。
「ふうん。夏祭りか。そうだね。一緒に行こうか」
 内木のいい返事を聞いたエリは、すっかり舞い上がっていた。
「やったあ!じゃあ、土曜日の5時、わたしから内木さんの家に行くわね!」
「うん、わかったよ」
「じゃあ、さようならー!」
 エリは嬉しそうに、急ぎ足で内木の家を後にした。しかし、宿題を一緒にやるという約束をしていた内木は、きょとんとしていた。
「エリちゃん、宿題をしに来たんじゃなかったのかな…?」


「土曜日は内木さんと夏祭りー!そおれっ!ただいまー!」
 勢いよく植え込みを飛び越て帰って来たエリを見て、ママは内木と同様にきょとんとしていたが、理由は内木と同じではない。


「エリ、早かったじゃないの。内木くんに宿題を教えてもらうんじゃなかったの?」
「あーっ!」
 夏祭りのことばかりを考えていたエリは、肝心なことを忘れていた。
「宿題が終わったんだったら、おつかいにでも…」
「行ってきまーす!」
 ママのお手伝い攻撃を遮り、エリは再び植え込みを飛び越えて内木の家へ向かった。


 その日の夜、エリは、早速土曜日の夏祭りのために、浴衣を選んでいた。
 アジサイや花火の柄…と、どれも魅力的で、エリは迷っている。


「これもかわいいけど、こっちもいいわね…」
「エリちゃん、何してるの?」
 そばでエリの様子を見ていたチンプイが、声をかけた。


「エヘヘ、浴衣を選んでるの。今度の土曜日にね、神社で夏祭りがあるのよ。内木さんと一緒に行くの!」
「夏祭り…浴衣?何それ」
 聞きなれない言葉に、きょとんとするチンプイ。


「かき氷屋さんとか綿あめ屋さんとかいろんなお店が出て、そこにみんなが集まるのよ。盆踊りを踊ったりもするの。浴衣はね、夏祭りに着ていくのよ」
「へぇ、夏祭りってなんか楽しそうだね!楽しんできてね」
 珍しく、チンプイは行きたがろうとしない。エリは不思議に思わずにはいられなかった。
「あら、どうしたの?行きたくないの?」
「だって、せっかくの内木くんとのデートじゃないか。楽しんできなよ」
 チンプイは、エリに気を遣ってあえて身を引いたのだった。エリは、その心憎さにチンプイに強く頬ずりをした。
「うふふ。チンプイったらわかってるじゃな〜い!」
「わわっ!やめてよエリちゃん!」





後編へ その他・アニメもののトップへ戻る ノベルコーナートップへ戻る ワンナイト・ララバイのトップへ戻る